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これは、私が、神様に提出した、最後の報告書である。
ただし、それを書いている時点では、私は、それが最後だとは知らなかった。
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バグ報告 #00000001
報告者:ミカエル(観測天使二級)
対象モジュール:人間/生命管理サブシステム
重大度:高
ステータス:オープン
【現象】
人間 ID #14092783 ——地上での名は、桐山文枝、女性、地上時間にして本来 7,432 日生きるべきところ、6,210 日で停止。差分 1,222 日。死因に該当する記録なし。仕様書にも、そのような早期停止の規定なし。
【再現手順】
1. 当該人間の魂ログを確認する。
2. 健康モジュールに重大な異常を見ない。
3. それでも、ログは「停止」を示している。
【期待される挙動】
仕様書に従い、7,432 日後に停止。
【実際の挙動】
1,222 日早く停止。
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私が、この報告書を書き終えた直後、神様から返信が届いた。
「想定内。クローズ。」
それだけだった。
私は、しばらく、画面を見ていた。
想定内、という言葉は、便利な言葉である。
責任を引き受けないし、説明もしない。
それでいて、間違ってはいない、ということになっている。
私は、新人だった頃、この言葉を聞くと、安心したものだった。
ああ、神様が想定しているのだから、これは正しいのだろう、と。
しかし、最近の私は、安心しない。
私は、桐山文枝、と名のついた魂のログを、もう一度開いた。
彼女は、最後の 1,222 日を、生きそびれた。
その 1,222 日のあいだに、彼女が会うはずだった人がいる。
その 1,222 日のあいだに、彼女が言うはずだった言葉がある。
その 1,222 日のあいだに、彼女に会うはずだった人々の、心の中の何かが、別のかたちに変わった。
それらは、すべて、想定内、なのだろうか。
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このバグは、おそらく、見過ごされる。
私の上司である神様は、忙しい。
そして、神様は、おそらく、自分の作ったシステムを、すべては把握していない。
これは、最近、私が、薄々、気がついていることである。
ただし、これは、まだ、誰にも、言っていない。
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バグ報告 #00000001、ステータス:オープン(神様によりクローズ済み、しかし観測天使ミカエルにより再オープン)。
私は、続けて、報告書を書く。
誰も読まないとしても、私は、書く。
それが、私の、仕事だから。