貸出履歴

第4話 / 全6話
第 4 話

2018年

『貸出履歴』 / 河野 ふみ AI 100%

* * *

【貸出履歴 2018】

2018-01-15 『緩和ケア入門』 返却 2018-01-29
2018-02-22 『最期の時間を、自宅で過ごす』 返却 2018-03-08
2018-04-12 『遺言書の書き方』 返却 2018-04-26

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2018-06-15 『動物園の歴史』 返却 2018-06-29
2018-06-15 『絶滅危惧種の現状』 返却 2018-06-29
2018-07-22 『最後の一頭になった動物たち』 返却 2018-08-05

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2018-09-08 『七つの生まれ変わりの物語』 返却 2018-09-22
2018-10-15 『輪廻転生の科学的考察』 返却 2018-10-29

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2018-12-22 『年末年始、ひとりで過ごす方々へ』 返却 2019-01-05

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司書のメモ:

2018年、Tさんは、ご自身の、最期について、本を、借りていらっしゃいました。
緩和ケア、最期の時間、遺言書。
Tさんは、ご自身の、お命の、限りを、知っておられた、と思われます。

夏に、突然、動物園と、絶滅危惧種の本を、借りられました。
何かを、見に行こうとされていたのか。
あるいは、見に行った後で、調べようとされていたのか。

——

秋に、生まれ変わりの本。
ご自身の、来世のことを、考えていらっしゃったのでしょうか。
それとも、過去の、ご自身の、生のことを、考えていらっしゃったのでしょうか。

『七つの生まれ変わりの物語』、という、本が、あります。
これは、ある男性が、七回、生まれ変わって、毎回、誰かを、愛する、という、短編集、です。
Tさんは、この本を、お借りになって、二週間、お返しに、なりました。
返却カウンターで、Tさんは、私に、こう、おっしゃいました。

「司書さん、私、これと、同じ、夢を、見るんです。」

「同じ、夢、ですか?」

「ええ。
私が、別の、誰かだった、夢を。
漁師、だったり、商人、だったり、教師、だったり、看護兵、だったり、する、夢。
そして、毎回、誰かを、愛している。」

私は、頷きました。
「それは、本の、印象が、残ったのかも、しれませんね。」

Tさんは、首を、振られました。
「いえ、本を、読む前から、見ていました。本を、読んで、初めて、整理が、つきました。私の見ている夢は、生まれ変わりだったのか、と。」

そして、Tさんは、こう、続けられました。

「七回、私は、誰かを、愛してきた、と思います。
今、八回目に、なるはずだったのですが、間に合いそうに、ありません。」

——

私は、何も、お答えできませんでした。
ただ、お返しくださった、本を、棚に、戻しました。

そのとき、本の、間に、何かが、挟まっていることに、気づきました。
小さな、メモでした。
メモには、震える文字で、こう、書かれていました。

「ヒナタくん、ミネさん、和雄。
三人とも、覚えている。
七回ぶんの、記憶が、戻った。」

私は、メモを、本の中に、戻しておきました。
Tさんが、忘れて、いらしたなら、お渡しすべきでした。
しかし、Tさんは、本を、返却なさったとき、忘れて、いらっしゃらなかったように、見えました。
あれは、Tさんが、本の中に、置いていかれたものだ、と、私は、判断しました。

このメモは、現在も、その本の、間に、挟まっています。
もし、その本を、お借りに、なる、未来の方が、いらっしゃれば、見つけてくださるかも、しれません。

河野

— 完 —
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