この作品におけるAIの関与
使用AI: Claude Opus 4.7
AI使用率は投稿者が自己申告した値です。
七年ぶりに訪ねた静岡の祖母は、認知症で私の名前を忘れていた。けれど、八十八夜の歌だけは、覚えていた。
祖母は、お茶を摘む歌を、うたっていた。
「八十八夜の、別れ霜……」
季節は、五月の連休のさなかだった。
祖母の住む町は、静岡の山あいで、八十八夜のころには、新茶の畑が、夕方になると霧で霞んだ。
私は、東京の大学に進学してから、七年ぶりに、祖母を訪ねた。
祖母は、九十歳になっていた。
***
「だれ?」
居間に上がると、祖母は、私の顔を見て、そう言った。
だれ? という問いを、私は、覚悟していた。
母から、聞かされていた。
祖母は、認知症だ、と。
「美里だよ、おばあちゃん。みーちゃん」
祖母は、しばらく、私の顔を見た。
それから、ゆっくりと、笑った。
「みーちゃん」と、名前は呼ばずに、ただ笑った。
それでも、笑ってくれた。
それで、十分だと、私は思った。
***
その日の夜、私は、祖母と二人で、お茶を入れた。
祖母は、急須を持つ手が、震えていた。
湯がこぼれて、茶碗の縁を、伝った。
私は、思わず、手を出しかけた。
やめた。
祖母が、自分でやろうとしていた。
「飲みなさい」
祖母は、私に茶碗を渡した。
新茶だった。
すこし、葉が大きすぎた。
若い、青い、苦い、緑色の味…
読者の声を投稿するには
ログインまたは新規登録が必要です