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2024年10月29日(火)追記
担当:市田 修一
本日、午前11時23分、ドナルド、永眠。
最後の、アジアスイギュウ。
日本国内における、本種の、最終個体。
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剥製化の、依頼が、博物館から、ありました。
私は、それに、賛成、しませんでした。
ドナルドは、最後の最後に、私を、見つめてくれました。
あれを、剥製にしたら、あの目は、ガラスの目に、変わります。
あの目は、ガラスでは、ない、目でした。
私には、それを、剥製に、できません。
しかし、博物館は、譲りませんでした。
記録のため、教育のため、保存のため。
すべて、もっとも、な、理由でした。
私は、最後に、ドナルドの、目を、もう一度、見ました。
すでに、目は、閉じていました。
私は、心の中で、ドナルドの、目の、最後の、視線を、覚えておきました。
剥製になっても、私の、心の中の、ドナルドの目は、剥製では、ありません。
——
数日後、新聞の、訃報欄で、ある方の、訃報を、見ました。
田中和雄、64歳、胃がん、ご逝去。
動物園に、来てくださった、おじいさん、でした。
ドナルドの、二週間後でした。
田中さんは、ドナルドを、見送ってから、ご自身の、最期へと、向かわれた。
私は、それを、勝手な、解釈と、知りつつ、そう、解釈することに、しました。
最後の一頭が、最後の目撃者を、見送り、最後の目撃者が、最後の一頭を、見送りました。
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飼育日誌、最終記録:
動物名:ドナルド
種:アジアスイギュウ
死亡日:2024年10月29日
担当者:市田 修一
備考:
最後の一頭でした。
これで、日本国内に、アジアスイギュウは、いません。
私たちは、もう、彼らを、見ることが、できません。
私たちは、彼らを、忘れて、いきます。
ただし、私は、忘れません。
ドナルドの、最後の、視線を、私は、忘れません。
それは、私が、最後の、目撃者だから、です。
最後の目撃者が、忘れた、瞬間に、彼らは、本当に、消えます。
私は、忘れない限り、彼らは、消えません。
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そして、今、私が、書いている、この、日誌を、誰かが、後年、読むかも、しれません。
読んだ方は、その瞬間、ドナルドのことを、知ります。
知ったら、忘れない限り、ドナルドは、消えません。
私は、この日誌を、読んでくださる、未来の、誰かに、お願いします。
「ドナルド、という、最後の一頭が、いました。
彼は、最後の、最後に、私を、見つめてくれました。
どうか、覚えていてください。
あなたが、覚えている限り、彼は、消えません。」
——
飼育日誌、終了。
市田 修一