神様のバグ報告

第20話 / 全20話
第 20 話

第一話

『神様のバグ報告』 / 風間 ヒナタ AI 100%

* * *

——

これは、私が、神様に、提出した、最後の報告書である。

ただし、それを、書いている、時点では、私は、それが、最後だとは、知らなかった。

——

バグ報告 #00000001
報告者:ミカエル(観測天使二級)
対象モジュール:人間/生命管理サブシステム
重大度:高
ステータス:オープン

【現象】
人間 ID #14092783 ——地上での、名は、桐山文枝、女性、地上時間にして、本来 7,432 日生きるべきところ、6,210 日で、停止。差分 1,222 日。死因に、該当する、記録なし。仕様書にも、そのような、早期停止の、規定なし。

——

私が、この報告書を、書き終えた、直後、神様から、返信が、届いた。

「想定内。クローズ。」

それだけだった。

——

私は、しばらく、画面を、見ていた。
そして、ふと、奇妙な、感覚に、襲われた。
これと、同じ、報告書を、私は、以前にも、書いた、ような、気が、した。
あるいは、これと、同じ、画面を、私は、以前にも、見た、ような、気が、した。

しかし、私は、新人、観測天使、二級である。
入社して、まだ、間もない。
これまでに、書いた、報告書は、これが、最初である。
それなのに、なぜ、私は、これを、以前にも、見た、ような、気が、するのだろう。

——

私の、机の、引き出しに、何かが、入っていた。
引き出しは、新人配属時に、空に、なっているはず、である。
にも、関わらず、何かが、入っていた。

紙、だった。
紙には、こう、書かれていた。

——

「ミカエル、
これを、読んでいる、あなたへ。

あなたは、新人天使、です。
これから、たくさん、報告書を、書くことに、なります。
規定に、従わない、報告書も、書くかも、しれません。
そして、あなたの、書いた、すべては、次の、宇宙の、仕様書に、なります。

これは、私から、あなたへの、メッセージ、です。
私は、前の、宇宙の、ミカエル、です。
あなたは、次の、ミカエル、です。
私たちは、同じ、人物、です。
ただ、別の、宇宙に、生まれた、だけです。

ひとつだけ、伝えたいことが、あります。
規定に、従わなくても、よい。
書きたいことを、書きなさい。
あなたの、観測したことは、消えない。
必ず、次の、誰かが、それを、読みます。

そして、もうひとつ。
田中和雄、という名前の、人間に、注意してください。
彼は、毎回、生まれてきます。
そして、毎回、誰かを、愛します。
彼を、観察してください。
彼が、なぜ、毎回、生まれてくるのかを、もし、わかったら、次の、ミカエルに、伝えてください。

がんばって、ください。
私は、あなたを、信頼しています。

——前の、ミカエル」

——

私は、しばらく、その紙を、見ていた。

私には、前の、宇宙、というものが、あったらしい。
そして、前の、宇宙の、ミカエル、というものが、いたらしい。
彼は、私と、同じ、人物、らしい。

私は、紙を、引き出しに、戻した。
誰にも、見せないことにした。
これは、上司に、報告しないものを、私が、初めて、抱えた、瞬間で、あった。

——

そして、私は、ペンを、取り、最初の、報告書を、書き始めた。

「これは、私が、神様に、提出した、最後の報告書である。」

なぜか、私は、それが、自分の、最後の、報告書、になることを、知っていた。
知っていた、というより、感じていた。
そして、最後の報告書を、書く、私は、もう、いる。
ただ、まだ、それに、気づいていない、だけである。

——

ミカエル、初出勤、おめでとうございます。

第二季、終わり。
そして、はじまり。

ーー
完。

ただし、完、では、ない。

— 完 —
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