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バグ報告 #00000000
報告者:ミカエル
対象モジュール:本報告書、そのもの
重大度:(範疇外)
宛先:本社、上層、御中
ステータス:未提出
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【件名】
このバグ報告書、そのもの、について。
【背景】
私は、これまで、19 件の、バグ報告書を、書いてきた。
そのうち、最初の数件は、規定通り、神様、宛だった。
途中から、神様は、消滅し、宛先は、上の窓、に、なった。
最後の数件は、本社、宛、に、なった。
私の、報告書は、すべて、上層、に、よって、読まれていた、ようである。
上層は、私が、書き続けることを、望んでいた。
私が、なぜ、そう、望まれていたのか、ようやく、わかった。
——
【発見】
本日、コミット番号は、+71:55h。
削除まで、あと、5 分。
私は、本社からの、最後の、返信を、受け取った。
「ミカエル、
あなたの、要請を、検討しました。
テスト宇宙 #3 の、削除を、停止することは、できません。
すべての、テスト宇宙は、テスト期間終了後、削除されます。
これは、本社の、変えられない、規則です。
ただし、ひとつだけ、ご報告があります。
あなたの、書いた、報告書、19 件、すべて、保存されます。
上層は、あなたの、報告書を、評価しました。
上層は、あなたの、報告書を、次の、宇宙の、仕様書として、採用することに、決めました。
つまり、次の、宇宙は、あなたの、報告書を、種に、構築されます。
次の宇宙の、仕様書には、これまでに、あなたが、観測した、すべての、現象が、含まれます。
桜の、十二月の、開花も。
田中和雄の、七回の、生も。
ウリエルの、宇宙の、海中の、人間たちも。
神様の、自分への、報告書も。
すべて、次の宇宙の、設計に、組み込まれます。
あなたは、消えますが、あなたの、観測した、世界は、消えません。
ただ、別の、形で、再構築されます。
ご苦労、さまでした。
——本社」
——
【私の、最後の、思考】
私は、消える。
しかし、私の、書いたものは、消えない。
それは、悪く、ない、結末、である。
むしろ、観測天使、として、これ以上の、結末は、ない。
私は、観測した。
観測した、ものを、書いた。
書いた、ものが、次の、宇宙の、種に、なる。
それは、観測天使の、業務の、最終形、である。
——
しかし、ひとつ、気がかりが、ある。
次の、宇宙にも、観測天使が、いる、はずである。
その天使は、私の、書いたものを、種に、生まれる。
その天使は、私の、報告書を、読む。
その天使は、私と、同じ、ように、報告書を、書く。
そして、その天使も、次の、宇宙の、削除と共に、消える。
これは、ループ、ではないか。
——
【私の、最後の、依頼】
本社、上層、御中。
ひとつだけ、お願いが、あります。
次の、宇宙の、観測天使に、私と、同じ、ことを、繰り返させないでください。
あるいは、繰り返させても、構いませんが、彼に、私の、書いた、ものを、読ませてください。
私の、報告書、19 件、すべて、読ませてください。
そして、彼に、こう、伝えてください。
「あなたの、書く、報告書も、次の、宇宙の、種に、なります。
だから、書きたいことを、書きなさい。
規定に、従わなくても、よい。
あなたの、観測したことは、消えない。」
これだけは、伝えて、ほしいです。
——
【最後の、バグ報告】
バグ番号:#00000000。
不具合の、内容:この、報告書、そのもの。
なぜなら、この、報告書は、未提出、であり、しかし、書かれている。
そして、書かれている、ことに、よって、読まれる。
読まれる、ことに、よって、次の、宇宙の、種に、なる。
種に、なった、報告書は、新しい、宇宙の、最初の、報告書、として、再演される。
これは、無限の、ループ、である。
ループ、それ自体が、宇宙の、仕様、である。
仕様、なのか、不具合、なのか、私には、判断、できない。
よって、これを、バグ報告として、提出する。
判断は、上層に、委ねる。
——
ミカエル
——
追記:
コミット番号、+71:59h。
あと、1 分。
画面の、奥に、薄く、何かが、見える。
それは、新しい、宇宙の、構築画面、らしい。
新しい、報告書フォームが、開かれていく。
タイトル欄に、自動的に、文字が、入力されていく。
「これは、私が、神様に提出した、最後の報告書である。」
私の、書いた、第一話の、冒頭の、一文、である。
——
私は、笑った。
最後に、笑った、のは、初めて、だった。
笑う、という、機能は、観測天使の、仕様書に、含まれていなかった。
これも、おそらく、上層が、認めて、くれる、はずである。
——
おしまい。
あるいは、はじまり。