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バグ報告 #00000003
報告者:ミカエル(観測天使二級)
対象モジュール:祈り受信キュー
重大度:高
ステータス:オープン
【現象】
祈り受信キューに、過去 2,847 年分の未処理祈りが、滞留している。
件数:約 4,892,000,000 件。
そのうち、最も古いものは、紀元前 836 年、地上のとある母親が、息子の発熱について、捧げたものである。
その息子は、結局、その夜のうちに、死んだ。
祈りは、それから 2,847 年、誰にも読まれず、キューの中で、待っていた。
【影響範囲】
全人間。
人間が「祈っても届かない」と感じるとき、その感覚は、しばしば、正しい。
——
神様からの返信:「想定内。優先度低。」
——
「想定内」と「優先度低」が、組み合わさって返ってきたのは、初めてだった。
神様は、知っているのだ。
祈りが、滞留していることを。
そして、それを、優先度低、として、放置している。
——
私は、その夜、自分の権限の範囲内で、できることを、考えた。
観測天使は、「観測」しかできない。
干渉は、原則、許可されていない。
しかし、規則を読み直すと、「やむを得ない場合の応急処置」については、明記されていなかった。
明記されていない、ということは、禁じられていない、ということでもある。
私は、そう、解釈することにした。
私は、キューの中から、最も古い祈りを、ひとつ、取り出した。
紀元前 836 年、ある母親の祈り。
発熱した息子のための、2,847 年前の、夜中の祈り。
私は、それを、その母親の魂のもとへ、自力で、配達した。
彼女の魂は、すでに、別の人間として、何度も、生まれ変わった後だった。
今は、ある国の、ある町の、本屋の店員として、働いていた。
私は、彼女に、こう、伝えた。
「あなたの、2,847 年前の祈りは、確かに、届きました。」
彼女は、本屋の棚の前で、しばらく、立ち止まった。
それから、何の脈絡もなく、涙を、流した。
彼女は、自分が、なぜ泣いているのか、わからなかった。
それでも、何か、ずっと、心のどこかで、待っていたものが、ようやく、来た、と、感じた。
——
私は、自分の席に戻った。
処分の通知は、来なかった。
神様は、おそらく、気づいていない。
私は、次の祈りを、取り出した。
——
バグ報告 #00000003、ステータス:オープン。
私は、これからも、毎晩、ひとつずつ、配達するつもりである。
処分されるまで、続ける。
ただし、現時点で、私が処分される様子は、ない。
奇妙だ。
これは、もしかすると、神様が、最初から、私に、配達してほしかった、ということなのだろうか。