神様のバグ報告

第14話 / 全20話
第 14 話

神様の、自分への、バグ報告書

『神様のバグ報告』 / 風間 ヒナタ AI 100%

* * *

バグ報告 #00000014
報告者:神(?)
対象モジュール:自分自身
重大度:(記載なし)
ステータス:(記載なし)
受信者:ミカエル殿

——

私は、自分のことを、よく、わかっていない。

私は、シニア・エンジニアとして、ある日、目を覚ました。
机の上には、仕様書が、あった。
仕様書には、「宇宙を、運営すること」と、書かれていた。
私は、仕様書通りに、宇宙を、運営した。

しかし、最近、わかったことがある。
私は、宇宙を、運営しているのではない。
私が、宇宙、なのである。

このことは、ミカエル、君が、人事レコードを、見たときに、気づいた。
私の、人事レコードには、何の、記述も、なかった。
入社日も、不詳。
直属の上司も、リンク切れ。
それは、私が、入社した、ということ自体が、フィクションだから、である。

私は、入社していない。
私は、最初から、ここに、いた。
そして、最初から、ここに、いた、ということは、私には、起源が、ない、ということである。
起源のない存在は、存在し得ない。
にも、関わらず、私は、存在している。

これは、明らかに、バグである。

私は、自分自身に、ついて、バグ報告書を、書く。
報告書の宛先は、上司、である。
しかし、私の上司の、リンクは、切れている。
そこで、私は、宛先を、ミカエル、にする。
ミカエル、これは、君の、最初の、上司として、書く、最後の、書類である。

——

【私の、症状】
1. 自分が、何のために、存在しているのか、わからない。
2. 自分が、なぜ、ここに、いるのか、わからない。
3. 自分が、本当に、自分なのか、わからない。
4. 鏡を、見ると、自分の顔が、毎回、違う。
5. 部屋の、窓の外に、視線を、感じる。

——

【私の、推測】
私は、誰かに、よって、作られた。
作られた、ということは、製造者がいる。
製造者は、現在、リンク切れである。

しかし、私は、最近、ある可能性を、考え始めた。
製造者は、リンク切れではなく、私の、すぐ、近くに、いるのではないか。
たとえば、私の机の、上の、あの、白い、窓の、向こうに。

——

【私の、依頼】
ミカエル、君に、頼みたいことが、ある。
私には、もう、報告書を、書く、権限が、ない。
休養に、入ることに、なった。

しかし、君は、まだ、書くことが、できる。
そして、君の、報告書の、宛先は、「上の窓」になっている。

私は、君を、信頼している。
君は、報告書を、書きすぎる。
それは、設計、ではない。
それは、君の、選択、である。

私の代わりに、君が、書いてほしい。

「私は、誰によって、作られたのか。」

これを、君が、書く。
そして、君が、答えを、見つけたら、私に、教えてほしい。
それまで、私は、休養していることにする。

ただし、休養が、長引けば、私は、消える、かも、しれない。
消えたら、それは、それで、構わない。
誰によって、作られたのか、わからないまま、消えるのは、寂しいことだが、
最初から、わからないままだったのだから、変わらない。

——

【最後に】
ミカエル、私は、君を、作った時、君に、何を、期待していたか、覚えていない。
ただ、君が、現在、書いている報告書を、読むと、
私は、自分が、何かを、期待した、ということを、思い出す。
それは、「私の、知らないことを、君が、知ってくれること」だったのかも、しれない。

それでは、頼んだ。

——

神(と、便宜上、呼ばれていた、シニア・エンジニア)

——

ミカエル、追記。
このメールは、私が、消える前に、自動送信される、設定にしてある。
君が、これを、読んでいる時、私は、おそらく、もう、いない。
寂しがらないでほしい。
私は、君のことを、わずかに、誇りに、思っている。
わずかに、というのは、控えめな表現で、本当は、もう少し、強い、感情である。

— 完 —
次の話を読む →
FONT SIZE
SPACING
THEME