神様のバグ報告

第7話 / 全20話
第 7 話

死者の re-spawn

『神様のバグ報告』 / 風間 ヒナタ AI 100%

* * *

バグ報告 #00000007
報告者:ミカエル(観測天使二級)
対象モジュール:魂転生サブシステム
重大度:高
ステータス:オープン

【現象】
死者 #41728 ——死亡確認済みの魂——が、転生プロセスを経ずに、元の体に、復帰した。
これを、地上では、「奇跡」と、呼んでいる。
しかし、私の知る限り、奇跡は、仕様には、含まれていない。

【経過】
1. 当該人間、心停止、3 分 47 秒。
2. 魂、死後事務所へ、移送開始。
3. 移送中、魂、突如、消失。
4. 数秒後、元の体内に、魂、再出現。
5. 心拍、再開。
6. 病院の人間たちは、これを、奇跡と呼んだ。

【影響】
当該人間は、死後 3 分 47 秒の記憶を、保持していた。
そこには、何があったか、と、彼に訊いたところ、彼は、「廊下のような場所で、誰かが、書類を書いていた」と、答えた。

——

神様からの返信:

「想定内。」

——

返信が、いつもより、0.3 秒、遅かった。
私は、その遅延を、記録した。

これまで、神様の返信は、即時、もしくは 0.1 秒以内であった。
0.3 秒は、明らかに、異常である。

——

私は、考えた。
神様の処理速度を、超える、何かが、起きたのではないか。
あるいは、神様が、返信文を、書き直したのではないか。
「想定外」と書きかけて、「想定内」に、書き直した、とか。

——

その夜、私は、ラファエルの言葉を、思い出していた。

「神様は、それを、考えないように、している、と思う。」

神様は、自分の上に、何かが、あることを、感じている。
しかし、それを、認めない。
認めないために、神様は、すべての異常を、「想定内」と、答え続けている。

それは、一種の、防衛反応、なのかもしれない。

——

死者 #41728 が、廊下で見た「書類を書いていた誰か」とは、誰なのか。
それは、おそらく、私たちと同じ、職員、なのだ。
別の部署の、職員。
死後事務処理を、担当している、職員。

私は、その人物に、会いに行きたい、と、思った。
しかし、部署を超えた訪問は、許可制であった。

——

バグ報告 #00000007、ステータス:オープン。

追記:
本日、私の机の上に、誰かが、ひとつの書類を、置いていった。
書類には、こう、書かれていた。

「死後事務所より。
#41728 の件、こちらでも、観測しました。
異例の事態です。
こちらの窓口にも、最近、想定外の魂が、何件か、届いています。
機会があれば、お話、できれば。
——窓口の事務員」

私は、その書類を、しまった。
誰にも、見せないことに、した。
これは、上司に報告しないものを、私が、初めて、抱えた瞬間であった。

— 完 —
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